ふむ・・・やっときたようじゃな。いつまで待っても来ないので、やきもきしていたところじゃ。
おお、よく来た!
ロトの血を引く勇者よ!
寅蔵は、今日も勇者を目指して修行した!
先週の日曜に、大学時代の友人と一緒に高尾山に登った。
きっかけは、その友人(ゴーレムと呼ぼう)が、今年度いっぱいで関東を離れてしまうので、それまでにどこか遊びに行こうというものだった。
ゴーレムとは大学時代からの10年以上の付き合いだ。
そんなゴーレムと旅行に行ってわかったことだが、彼はどうも時間の概念がおかしいようだ。
志高い我々は、先月、「赤穂浪士の墓参りしよう」、ということで待ち合わせをした。
しかし時間になっても彼は現れなかった。
寒い中、待ってても来ないので、仕方なしに先に寺に行って墓参りを終えた頃にひょっこり現れた。
だいたい30分くらいだった。
彼には待ち合わせに遅れても、相手に悪いという観念が存在しないらしく、
「ザーボンを倒すのに時間がかかってしまいました!」
などと言っていた。
きっとメキシコとかのラテン気質なのだろう。
親しき中にも礼儀ありだし、私は全てを計算して効率良いルートを楽しむタイプだ。
そこで責めるでもなく、彼の考えをよくよく聞いてみると、こんな言葉を発した。
「いや〜、俺は別に待ち合わせの時間に待たされても気にならんのよ〜」
つまり、自分がオッケーだからお前もオッケーだろう?
というロジックのようだ。
私は勇者だから、もちろんオッケーだ。
でも、何度も続くとそれは違う気がするぞ。
今回もきっと待たされると予想した私は、彼との待ち合わせ時間を相談した。
どうやら最寄駅から2時間かかるらしい。
ゴーレムは平日、ストレスフルな仕事をしているために、休日は朝が起きれないと言っていた。
そんな彼が、待ち合わせを10時と提案してきた。
危険なシグナルを感じた。
10時に待ち合わせるということは、逆算しても8時には家を出なければならない。
私の最寄駅でも2時間はかかった。つまり、同じ条件だ。
すると、遅くても7:30には起きていたいところだ。
ゴーレムが休日にそんなに早く起きれるとは思えない。
妖精の笛を吹かずしても、彼は深い眠りについているだろう。
そこで私は、10:30と提案した。
そうすれば、彼はきっと11時には来ると予想したからだ。
私は、11時に到着する電車の時刻を調べることにした。
当日の朝を迎えた。
まず、7時にラインを送った。
8時過ぎに、出発の準備が整った。
しかし、既読がない。どうやら深い眠りに付いているようだ。
私は平日と同様、チャリを全力で飛ばして駅に着いた。
9時前。まだ既読がない。
電車は順調に進んでいく。
やっと既読が着いたようだが、返信はない。
約束の10時30分が近づきはじめた。
10:10頃、ゴーレムからラインが来た。
「今どこ?」
私は、「順調に向かっています」と返信した。
もちろん、ゴーレムが遅れることを見越してのプレッシャーだ。
10:20
🐯「こちら〇〇です。そちらは今どこ?」
・・・返信がない。
10:25
作戦を実行に移す。
ラインをゴーレムに送った。
🐯「電車が遅れています。約束の時間から少し遅れます」
しかし、ゴーレムからの返信はなかった。
きっとダッシュで向かっているのだろう。
予定通り、11時に高尾山口駅に到着した。
しかし、ゴーレムからのラインはない。
🐯「まだですか?」
ラインに既読は着いてない。
よっぽど急いでいるんだろう。
11:20
ゴーレムからラインが来た。
「今どこですか?」
・・・もう着いたって言ってるだろう(-。-;)
🐯「駅の前で絶望しています」と返信。
11:30
「あと5分で着きます!」
とゴーレムからライン。どうやら車で向かっているようだ。
彼のあと5分は、10分くらいと思った方がいい。
11:45
「どこかに駐車場ないっすか?」
🐯「一度、合流して一緒に探しましょう!」
もうこんな昼前だから、どの駐車場もいっぱいだ。
仕方なく、駅前をぶらぶらしながら、少し離れたところに行くと、おばあちゃんが自分の家の庭に誘導していた。
なんていう合理的な商売だろうと思った。
結果として合流できたのは、11:50だった。
こちらの作戦を大幅に上回り、約束の時間が10:30だとすると、かなりの遅れだった。
さすがに遅れがひどいので、相手を責めるでなく、自分が辛かったということを主張してなじることにした。
「晴れ渡った青空の下で絶望してたよ!」と。
どうやらゴーレムは、10:25の作戦ラインを見て、
「もう少しゆっくりできる」
という発想になったらしく、家でのんびりしていたようだ。
私もさすがに驚いた。
そして11時くらいになってやっと重い腰を上げて、高速道路を使って車で向かう作戦に変更したようだ。
これでも友人が多くいるのが、彼の魅力の為せる技だろう。
小さなことにクヨクヨせず、マイペースに生きる寛容な心が、私に足りなかったと教えられた。
高尾山を無事に登りきり、久しぶりに筋肉痛になった。
やっぱり一人で登るのは退屈だが、友人と登ることで少年の心を取り戻すことができる。
雲ひとつない快晴の冬空のように、私の心も晴れ渡った。
寅蔵のたいりょくが5ポイント上がった!
家に着くとすぐ、寅蔵は、深い眠りについた。